ヨギは、いつものように、イラクサの葉を摘み取っていた。煮詰めて、腎の病を治す煎じ薬を作るため。
今日 朝は格別に暑かった。夜明けは、しらじら
どんよりネズミ色。
こんな日は、用心しなくちゃ!
ヨギは思った。
寝起きにそんな事を思っていたのをすっかり、ヨギは忘れてしまった。
食事の後、背負いかごに草刈り鎌を持って、小さな小さな、ヨギの家を出たところ、門を越えようとしたら、
ポンッと 青い筆箱が
空から降ってきた。
あれあれ。あっちの世界からのお客さんかな?
ヨギは背負い籠と草刈り鎌を、そっと地面におろした。そして、青い筆箱を手にとって、家に戻った。
こんにちわ。どうしたの?
筆箱の蓋をあけると、中には何も入っていなかった。
ただ、しんなり 悲しい風が、蓋からあふれてきた。
どうぞ聞いてくださいな。私は、筆箱。
古い都で、ブリキを青いペンキで染めて、丹念に
丹念に磨かれて、
古い家屋の店先で、一番目につくところに、飾られた。
飾り職人 自慢の逸品。
手にとって買ったのは、
背の高い歩く猫。
口ひげピンと立て、
ふむふむ。。。
これはいいもの。
嬢ちゃんに買ってあげよう。
背の高い歩く猫は、ステッキふりふり家路につく
嬢ちゃん嬢ちゃん
きれいだろ
この筆箱使って
たっぷり字を覚えるんだよ
にゃあん にゃん
嬢ちゃんは大きくなってお嫁に行く
汽船に乗って、大洋を越えて、見たこともない国へ行く
筆箱で
につまった 鉛筆で、ことばをいっぱい書いた
あたし 筆箱 に 嬢ちゃんの気持ちがいっぱい詰まっているの
嬢ちゃんはもういない
ごちゃごちゃっと
嬉しかったり 悲しかったり 怒ったり 懐かしかったり
いろんな事を思ったのに
嬢ちゃんは、あたし 筆箱にみんな詰めて
海にポイッと捨てちゃった
どうしたの 嬢ちゃん
ごめんなさい 筆箱。
私 あと1年しか生きられないみたい。
だから お別れ。
私は、これから砂漠の果ての、そのまた果ての、
緑の国へ。
ごめんなさい。
・・・
張り裂ける思いで、青い筆箱はここにいた。
ヨギは黙って 青い筆箱を両手で包んだ。
可哀想に。
青い筆箱は、鳥になって飛んでいった。
今度こそ、幸せにおなり。
ヨギにはそれしか言えなかった。











